K-20/怪人二十面相・伝

ウォーリーはしばらくは公開してるだろ、ってことで、なんとなく短期間で終わりそうな雰囲気を漂わせている本作を観てみることにした。


舞台は、第二次世界大戦を回避したパラレルワールドの日本。世間を騒がす大泥棒「怪人二十面相」に間違われてしまった主人公、遠藤平吉は自分の無実をはらす為、二十面相に戦いを挑むことになる。


本作では、現在の世相を反映しようとしたのか、階級と貧富の差が極端に激しい社会が背景になっているのだが、映画の中での描き方がかなりひどい。

例えば、主人公が隠れ住むことになる泥棒長屋は、貧しい人々が居住している、ということになっているのだが、妙にセットが綺麗なので、全然貧乏そうに見えない。なお、かくまわれている主人公は無職なはずで、大人一名を養っていける程度の金はどうやらあるらしい。
ちなみに、親を失った孤児たちは野宿同然の暮しをしているという描写があるのだが、長屋の大人たちは保護する気はないらしい。後に、華族のヒロインに主人公が孤児たちの暮しを見せて説教するのだが、かつての舎弟を野宿させておいて、屋根付きの家でぬくぬくと暮しているお前が言っても説得力ゼロじゃん、と思ってしまった。

説教されるヒロインを演じるのは、松たか子。白を基調とした衣装や、幾つかの演出を見るに、どうもクラリスをイメージしていると思うのだが、中の人が全然貴族っぽくなくて、むしろ庶民の服を着ている描写の方がサマになっている始末。ただ、「このヒロインは別に色っぽくはないですよ」と明示するようなシーンがあったので、この辺りは意図したキャスティングと演出なのかもしれない。

とまあ、突っ込み所は色々あるものの、かっこいいオープニングや、それなりに魅せてくれるアクションは結構好きだったりする。音楽がダニー・エルフマンちっくだったり、スパイダーマンまがいのアクションがあったりと、なんとかして冒険活劇を作りたいという心意気は買いたいところだ。
また、中盤付近では、映画館の観客から笑い声が起きていたり(バカにした笑いではなくて、演出に沿ったかたちでの笑い)と、それなりに楽しめる映画になっているのではないかと。



<以下、ネタバレ>

怪人二十面相の正体については、明智小五郎を演じるのが仲村トオルであり、演技が悪役ちっくなため、冒頭付近からほぼバレバレだと思う。ただし、中盤で明智もなんかいい人っぽいところもあるし、もしかすると別人かも……と思わせて、終盤でやっぱり明智が二十面相でした、という構成になっているのではないかと。ここはさらにひねって、「黒幕は小林少年でした」だったりしてもよかったような。

あと、冒頭で散り散りになったサーカスの面々に関して、なんのフォローも入っていなかったはずだけどいいんだろうか。特に団長の病気の件はどうなったんだろう。
さらに、主人公が礼を述べるシーンってあったっけ(これは見逃している可能性あり)。