ブレインストーミング/君さえ居れば何も要らない

One・Two・Three/The 摩天楼ショー」から数えて4枚目のシングル。同時に、5月でモーニング娘。を卒業する田中れいなが参加するラストの曲でもある。
一聴する限りでは、卒業曲特有の湿っぽさはあまりなくて、これまでのEDM路線の延長線上の曲という感じが強い。ただし「ブレインストーミング」のMVには田中れいな道重さゆみが並んでいるクローズアップのカットがあって、その一瞬だけは「ラストシングル」っぽい演出になっている。*1


ブレインストーミング」は、いかにも今現在のモーニング娘。でございます、というメロディーとリズムに彩られた自己言及ソングの体になっている。また、最初に発表されたときは気付かなったが、12期メンバー募集のお知らせを経て聴き直すと、「さぼってないで すねてないで こもってないで こっちにおいで」という箇所は、アイドルに憧れている女子に向けた詩でもある(みんなハロプロにおいでよ! という感じ)。さらに言えば、「そろそろ出発だ」みたいな下りがあるので、新しい道を歩み出す田中れいなへの応援歌ととることもできるだろう。ひとつの曲に色々な意味を込められるのは良い曲の証であり、したがって「ブレインストーミング」は大変良い曲である。
ただ、全体としてはこれからのモーニング娘。の曲であると解釈するのが自然であろう。しかも「普段通りしてれば 褒められるタイプ」「人見知りするのが 残念なタイプ」、そして「さあ 舞い踊れ さあ 胸を張れ」という箇所を読むと、これって鞘師里保個人に向けられた歌詞ではないか、という気がしてくる。つまり、これから名実ともにエースとして表舞台に立つことになる鞘師を激励しているのが「ブレインストーミング」の中核にあるのではないか。


ということで、「ブレインストーミング」を鞘師の曲とするならば、「君さえ居れば何も要らない」は田中れいなの曲である。いや、歌詞が男性視点なので、これは、つんく田中れいなに向けた曲と言える。出だしの「僕たちは自由だろ なのに窮屈だ 『あれはダメ』『それはまだ』悔しくなるよ」がいかにも田中れいなっぽいくだりになっていて、この解釈でサビの一節を聴くと、なんとも切なくも愛にあふれた曲だなあという印象に変わってくる。

総じて、ひとつの区切りとなり、そしてこれからの未来に対して希望を託したシングルになっている二曲だなあという感じがする。カップリング曲も良さげな曲が揃っているっぽいので、これからも聴きこんでいきたい。

*1:なお、田中れいなが一人で歌う「ロックの定義」のMVはさすがに卒業色強めだと思うが、こちらは未見