「特別でないただの一日」感想(ネタバレ)
購入報告を書いただけではもったいないので、感想をざっと書いておくことにしたい。ただし、完全にネタバレをしていますので、未読の方はご注意のほどを。
物語は、学園祭終了まで
タイトル的に、今作は学園祭準備話で終始するかと思ったのだが、なんと今回で一気に学園祭自体にカタをつけてしまう。演目の話題であれだけひっぱいっておいて、あっさり「とりかえばや物語」でした、で、終わりというのはちょっと拍子抜け。
中心がない
前作(「チャオ ソレッラ!」)でもそうだったのだが、物語の核となるエピソードが存在しない。おおざっぱには、「とりかえばや物語」の準備にまつわる話、瞳子絡みのトラブル、可南子の父親に関する話、という3つのエピソードが平行して語られているのが本作の特徴で、そのため、どうしても散漫な印象を与えてしまっている。
「とりかえばや」内容紹介が伏線
「じ、じゃあ。『とりかえばや』はテーマが重い。主人公に妊娠出産なんてことも起きるストーリーは、高校生がやる演劇にふさわしくない、っていう」(p21)
という科白が、実は後半の伏線になっている。
「高校生がやる演劇にふさわしくない」と言わせておいて、しっかり、作中で妊娠出産の話を出してくるあたりに、作者の性格の悪さが伺えますね。
削除されたエピソード
祐巳視点で語られる前半に対して、学園祭が始まる後半部分は、各キャラクターの視点がいりまじる群像劇チックな展開になっている。ところが、学園祭期間中の起こりうる話題が意図的に省かれているような気がする。具体的には江利子は本当に学園祭に来なかったのか、来ていたとしたら由乃と何かあったのか、とか、聖と志摩子(と、乃梨子)は顔を合わせたのか、とか。これに関してはあとがきの
学園祭だから、ぐっちゃぐっちゃ感がありますよね。話の中に出てこなくても、陰でいろいろなことが起きているような気がしませんか。
あたりで示唆されているので、次作あたりで触れられることになるんだろうか。
ヤクザ映画にハマる由乃
注文をいちいち、ヤクザ用語に取り違えるくだりがめちゃめちゃ可笑しい。